YUI UCHIDA

uchida2

──直木賞をとる前から密かに思い慕っていた辻村深月さんにもオファーしようと考えていたのですが、あえなくNG。さらに個人的にも色々と忙しい時期が重なりまして、という言い訳を添えて第4回目のインタビューを始めさせて頂きます。
本日は山梨県出身で絵画や4コママンガ等、多彩な活動をなさっている内田ユイさんです。よろしくお願いします。
 

人と違うことをしてひとつ抜き出たい

普段は会社でグラフィックデザイナーとしてポスターやカタログの平面系のデザインをしています。その傍ら、絵を描いたり現代アートでインスタレーション(空間芸術)を作ったり、趣味で4コママンガも描いたりしています。
びだいせーのゆるい話 http://yuiuchida.web.fc2.com/bidaiseinoyuruihanashi.html

──なるほど。では、そもそもアートの道を志すきっかけを教えていただけますか。

もともと中学2年生の時に行った山梨県立文学館で観た樋口一葉の日記の一節「あはれくれ竹の一節ぬけて出しながなとぞ願いける 」(訳:人と違うことをしてひとつ抜き出たい)に感銘を受けて、何か人と違うことをしたいなと中学3年生の時は舞台役者になりたかったんです。当然親は大反対。でも高校1年生くらいまでそれを引きずっていて 将来は日大の芸術学部演劇学科に行くと決めていました。それでも反対されて「じゃあ私は何になったらいいの!」と泣きながら親に叫んだのですが、それでも現実的でないと一蹴されてしまいました。しかし先ほどの樋口一葉の一節がどうしても忘れられなかったので、それなら美大に行こうと決意しました。もともと絵を描くのが好きだったし、県のコンクールとかでもよく入賞していたので親もそれには承諾してくれたんです。
ただ美大に行こうと決めたのが高2の秋だったんですよ。普通の美大受験生にしては遅すぎたんです(笑)。急いでデッサン予備校に行って「え、今から?」みたいな。でも浪人はできないと親から言われていたので猛勉強しました。結果無事に第一志望の大学に合格してそこに通う事になりました。

―スタートダッシュ完璧じゃないですか。

でも入学していきなりガッカリ。自分の思ってたよりも周りの意識が低すぎたんです。この大学終わってるな、と感じて違う大学に編入しようか本気で考えたくらいです。でもそんなことばっかり言ってると友達もできないので、とりあえず流される感じでよくある普通のキャンパスライフをキャピキャピと送っていました(笑)
でも勉強したり、色々な作品や作家のインタビューを観たりするうちにこの雰囲気に絶対流されちゃ駄目だなと2年生の終わりに本当に思ったんです。その流れで 現代美術に触れて、こういう美術もあるんだなと傾倒していきました。特にジョーン・ジョナスという作家には影響を受けて自分が「女性作家である」ということを意識するようになりました。
ジョーン・ジョナス / Joan Jonas http://www.wako-art.jp/artists/joan_jonas/index2.php

──なるほど、「女だからって馬鹿にしないでよ、絶対負けない」という気負いでジェンダーを越えようとする女性アーティストがどのジャンルにも多く現れている中で内田さんは女としての自分に気付いたわけですね。大和撫子というか。若くして男/女という対立を無効にするのではなく女性として表現していくことを自覚した、というのはとても興味深いです。

これは中高共学だった私がいきなり女子大に入ったというのが大きいと思います。正直、女社会がすごい嫌で昔から男の子友達とばかり遊んでいました。でもたくさんの女流作家たちに出会って嫌な面ばかりでなく、女にしか持てない感性や表現があるということに気付いたんです。それらの作家たちに励まされ、最初に思った様にこの大学終わってるなとか言ったりせずに縁あって入ったわけだからもっと勉強しようと思えるようになりました。
その後は図書館に篭って勉強することが多くなりあまり友達に会ったりとかもしなくなってしまったので孤独ではありましたが、それがバネになって卒業制作にも打ち込めました。この卒制が自分で作った課題とかでは無い初めての作品と呼べるもの だと思ってます。それが今の活動の原点。11月にはまたギャラリーでグループ展に絵を出す予定です。
 

70s学生の遺志とゆとりの意志

──面白いですね。それから、そのような志を持つ内田さんを育んだ故郷山梨についてもお聞きしたいのですが、甲州最前線が提起した仮説「山梨の文化的被災」や若者についてはどうお思いですか。

やっぱり甲府に降り立つと寂しいですよね。閉まってるじゃないですか、シャッターとか。東京に出てから山梨の良いところと悪いところに気づいたんですが、ずっと中にいると分からないんだと思います。外に出た人が火を付けて行く、という点で甲州最前線という活動はとても面白いと思いますよ。
震災以降色々なことが変わって来ています、デモが起きたりだとか。試しにこの前私も行って来たんですよ。変な団体のおじさんとかも勿論いるんですが、普通の大学生や家族連れの人とかもいました。よくある胡散臭いものとは様相が違うなと感じたんですよね。

──まあ、その過激なイメージは70年代の左翼の皆さんの功績ですよね。坂本龍一さんとか高校生の時から参加してたらしいですけど(笑)。

実は私、70年代の学生闘争とか結構好きで全共闘とかの映像をYouTubeで見るんですよ。

──おお。そういえばこの前チャリンコ屋に行って「今からチャリンコでデモ行くんで空気入れてください」って言ったらおじさんに「昔のデモはヤバかった。この一帯も皆店閉めちゃって投石とかに怯えていたんだぞ。それに比べたら最近のはお行儀が良すぎるわい」なんてシュポシュポしながら言われましたけどね(笑)。それだけ激しい運動だったんだっていう。

というのも、若者が自分たちの体制を変えたいという意思を主張している、というのにとても共感するんです。別に火炎瓶投げろとかそういうんじゃなくて、結局間違ったベクトルに向かった70年代の若者たちですけれど、当時の現状についてすごく色々考えていたんです。23~24の若者はもう十分日本(山梨)に加勢(政)できる年齢じゃないですか。だから現代の若者ももっと主張するべきだと思います。別に原発に賛成でも反対でもどちらでも結構ですけど、主張したり意思を持つというのがとても大事だと思います。
それから山梨に関して言えば、ちょっと前に「こうふのまちの芸術祭(http://kofuart.net/)」というイベントに行ったんですけど良かったです。シャッター街を使った現代アートのイベントで。地元に縁のあるアーティストを集めていて面白いなと思いました。

──ありがとうございます。意思を育てる教育を目指したのがもともとのゆとり教育の理念だったと寺脇研さんも散々主張しています。YouTubeとテレビの一番違うところはキーワードをタイピングするかしないかじゃないですか。僕はタイプするワード=ある種の意志だと思っています。つまり自分が見たいものがなかったら成り立たないんですよ。だから意志教育こそ今必要なんじゃないかなと思うんです。そう考えるとこのインタビュー活動もゆとり教育の延長線上だなんて思ったりしてしまいますね。
では今後のアーティストとしての展望について教えてください。
 

ググれ

今色んな分野に取り組んでいて、絵を描いたり漫画を描いたり、インスタレーションをしたりでまだ自分の中で何が良いのか迷走している部分もあるんですよ。でも、長い目でもっと考えようと思っているので、まだ何にもやってないなとも感じています。これから何をしたいっていうのも特に無いんですが、とにかく今できるものを作ったり描いたりしたいです。
それと、アートをやるということで一番大事なのは「続ける」ってことなんですよ。音楽でも何でもそうだと思うんですけど、続けられるかどうかが才能だとも思っているのでまずは「続ける」ってことをやりたいと思います。
特に女性で続ける人ってほとんどいないんですよ。結婚して子どもが生まれると自分のやりたいことなんてやってる場合じゃないとか。私は欲張りで頑固なんで、子どもも産みたいし結婚もしたいし絵も描きたいです。それに女性って子供産むと変わるらしいですね?

──え、いえ、僕は男なのでよくわからないですけど(笑)

変わるらしいんですよ(笑)。ホルモン的にとか生物学的にも意識とかも。私は今子どもの絵ばかり描いてるんですけど、そういう面では女性ということを意識しているし、母性とかも女性しか持って無いものだと思うのでそこを大事にしたいですね。

──なるほど。では最後に、山梨の若者に一言お願いします。

とにかく自分の面白いと思ったものを是非続けてください。面白いと思えるものが見つからない人はググってください。何もしなくても情報が入ってくる時代です。ネットでも何でも良いので色んなことをして自分から探していくべきだと思います。

──自分から進んで行動して欲しいというのは今までのゲストの全員に共通する主張ですね。
本日のゲストは内田ユイさんでした。ありがとうございました。
 

編集後記(小池)

1時間半にも及ぶインタビューだったので、今回も涙を呑んでカットにつぐカットだったのですが、今回は初の女性ゲストということでとても新鮮でした。
特にジェンダーについての考え方は興味深かったです。母性ということに関しては青鞜やモダンガールの登場以来多くの議論が交わされてきたと思いますが、今もその問題は有効で考えられるべきなのだと。
他に上った議題として2.5次元ファッションやヲタクカルチャー、中二病など。山梨って本当に面白い人がたくさんいますね。それではまた次回!

 

内田ユイ(ウチダユイ) – 1988年山梨県生まれ。女子美術大学 芸術学部メディアアート学科卒業。現在はグラフィックデザイナーとして勤務しながら、イラスト絵画の他にインスタレーションなど現代アートの制作活動を行う。卒業制作選抜展「女子美スタイル☆最前線2010」(2011)「Girls Illust Exhibition#14」グランプリ受賞(2011)「日常と並列させるために」(2011)個展「リクビダートル」(2012)
公式サイトはこちら

Tweet about this on Twitter0Share on Facebook0