TOMOHISA MOCHIZUKI

TOMMY

 今回の甲州最前線インタヴュー「レペゼンヤマナシ」は私、小池が甲府中心街で主宰していた音楽ライヴパーティ「火と風」の最終回に行われたトークセッションをお届けします。

 ゲストにはフリーペーパー「BLUE STAR MAGAGINE」の望月智久さんをお呼びして、この最果ての地方都市である甲府における移民問題、リノベーション文化、音楽、アート、などなどお互いの数年間をざっと点検していくような濃い内容となりました。
 

この4年間、甲府で何が起きた?

 小池:本日のトークセッション、ゲストは甲府が誇るクリエイティヴなフリーペーパー「BLUE STAR MAGAGINE」のライター望月智久さんです。よろしくお願いします。
 

 望月:宜しくお願いします。
 

 小池:この「火と風」は4年間続けてきました。まあ色々とあったわけなんですが、望月さんも3年間この「BLUE STAR MAGAGINE」に関わってやっていてどうですか?

 
 望月:僕の所属するVALEMというデザイン会社がこの「BLUE STAR MAGAZINE」を発行しているんです。色々なデザイン、企画の案件をしながら編集部兼任ということで作っています。

 毎回山梨のことを全方位的に取材していますが、特には、アートをやっている人とか、こういうイヴェント(「火と風」)をやっている人、山梨出身で日本全国だったり世界を舞台に活動している人を取材しています。
 

 小池:季刊誌ですから、最新号で13号目ですよね。特に思い出に残っている取材などありますか?
 

 望月:いろいろありますね。最新号のHITOTZUKI、おみゆきチャンネルもそうですし、アーティストのPVでもご活躍されているマルチなクリエイター、アートユニットのmagmaとか。

 でも、特にというと、二年目の春号ですかね。山梨の美容師さん同士の対談を企画したんです。CHARMEとVISIONっていう有名なサロンがあるのですが、オーナーのお二人にオファーをしました。CHARME、VISIONと言えば山梨で行っている人は多いかなと思うし、そこから独立して美容室をやっている人も沢山いるので、色々な人が関わっていますね。そのお二人はかつてCHARMEで師弟関係にあって義兄弟のような関係性。仲が良く、互いを信頼しているからこそ、主張がぶつかったりっていうことが昔にあって。紆余曲折を経て今はとても良い関係です。お店同士でも講習会をやったりと交流があります。

 お互いにオーナーという立場もありますから、公の誌面にお二人揃って出ていただくというのは、その時まではおそらく前例がないことでした。「この対談、本当に上手くいくのかな」って正直びびってました(笑)。僕はプライベートでお二人にお世話になっていたので経緯や関係性を知ってはいましたけど、誰もそれをやろうとはしなかったですから。いざ対談となって、お互いの昔から今に至るまでを無事に色々聞けたっていうのは思い出深い記事でしたね。自分でもいい経験をさせてもらったというか。

 お二人が同じ場で同じ写真に写ってどうこうする、っていうのは今まで無かった。むしろ僕はそんな二人が見たかった。それをやれたのは嬉しかったですね。僕みたいな駆け出しの声になぜそれをするのか、と、真剣に耳をかたむけてくれて、本物の大人に勉強させてもらいました。僕のボスもそのお二人とは昔から関係性があり仲が良いので、その恩恵も大きかったこともあるでしょうね。

 
 小池:僕と望月さんって美容師ネタで良く盛り上がるんです。この間も「CHOKI CHOKI」っていう雑誌の話で凄く盛り上がって。その雑誌は今の読者モデル、つまり「読モ」の先駆けで、まあコストパフォーマンスの良い素人お洒落モデルを「おしゃれキング」として起用した画期的な雑誌なんですよ。それが新しかった。で、望月さんはその僕らのアイドルであるおしゃれキングのひとり、内田聡一郎さんをDJとして甲府に招いたイベントで共演をしたり、外交的にもユニークな事をやられてますよね。
 

 望月:僕は元々MC、ラップをやっていたんです。ヒップホップをはじめ、さまざまな音楽イヴェントにも関わっていたっていうのもあって、そこでいろいろな人とのつながりがあったっていうのはありますね。それで声をかけてもらって、内田聡一郎さんにもお会いできました。
 

 小池:でも、この話はとめどもなく脱線し続けていくのでここまでにしておきましょうか(笑)。フリーペーパーの話に戻りますが、3年間続けてきて反応などはどうですか?
 

 望月:反応…。今となっては色々なフリーペーパーあるじゃないですか。土屋さんという方がやっている「BEEK」とか、山梨県立大学が発行している「Kofuret」とか。たぶん他にもいろいろあります。でもブルースターマガジン創刊当時の山梨、特に甲府ではクーポン誌はあったけど、読み物としての物はほとんどと言っていいほど無かったんです。
 

 小池:ホットペッパーはあったけど、読み物としての強度があるフリーペーパーは無かったと?
 

 望月:そうそう。僕らは編集部として、山梨でもデザインやアート性を取り入れたものを作って皆の手に取ってもらって楽しんでもらいたいって想いがあった。そして読み物としての強度も持っているという。結果、今こうして山梨でフリーペーパー文化が盛んになったということの一役を担えていたら凄く嬉しいですね。
 

 小池:なるほど。ところで、望月さんのオフィスは甲府中心街にあるじゃないですか。ライター目線だから街を鋭い視点で見てると思うんですよ。僕も「火と風」を4年間やりながら、オーガナイザー目線で「面白い人を探そう」って観てたんですけど。その点で何か目につくこととかはありました?
 

 望月:うーん。大きな変化って実は無いんですよ。
 

 小池:寧ろ、何がありましたっけね。ココリ(市が投資したショッピングセンター)が出来たのはもっと前でしたっけ?
 

 望月:その少し前くらいですね。銀座ビル、元々トポス(ショッピングセンター)だったところが取り壊しになったり、アーケードの屋根が取り払われたりっていうことはありましたね。そういう公共事業的な変化はあるんですけど、個人レベルではどうでしょう。でも新しいお店は増えましたね。
 

 小池:そうですね。カフェとか増えましたね。本日の会場のカフェモアラもそう。「火と風」も第一回から第七回までは、甲府は甲府でも中心ではなくて昭和町でやっていたんですよ。でもあまりに僕が集客を伸ばせなかったせいで途中でお店側からギブアップされてしまったんです(笑)。その時からの常連さんも今日はいらっしゃいますけど。

 「じゃあ、次はどこでやろうか?」ということで色々リサーチしたんです。でもKAZOO HALL、CONVICTION、ボデガといった山梨の主要なライヴハウスで個人企画を打つにはコストがかかりすぎる。となると、やはりカフェとかを借りてドラムなどを含めた音響機材を持ち込んでやるのが一番現実的だった。

 だから甲府中のカフェに片っ端から電話したんですよ。その中で一番話がグルーヴしたのがカフェモアラの店長(現在はオーナー)の雨宮さんだった。そこから2ヵ月に一度企画するようになったんです。話を戻すと、片っ端から電話できるくらいカフェが本当に増えた。カフェが増えると何か空気が変わりますよね。
 

 望月:特に寺崎コーヒーAKITOコーヒーに代表される、サードウェーヴと呼ばれるコーヒー文化が甲府に持ち込まれましたね。たぶん一言でくくられるのは嫌がるところだと思うんですが。まあ、ちょっとずつ行きつけができて、そこを拠点に散策してみたいなことも増えたと思う。個人の飲食店とかでオリオンイースト(商店街)もテナントが埋まったらしいですね。
 

 小池:ココリのテナントこそ埋めた方が良いと思ってましたけどね。今でこそ増えましたけど一時期、宝石か100円均一かアニメショップか、っていう極端な事態になってましたから(笑)。入るたびに「ああ、ここが最果ての地なんだな」って思いながらトイレだけ借りて、その場を後にするという。
 

 望月:僕もトイレ使いは良くしていました。ていうか、あの建物も昔はファッションビルだったんですよ。セシルマクビーとかありましたもん。東京で言う所のパルコ。小さいパルコですね。階層ごとにギャルのブランドがあったりとか、1階は結構ハイソな感じで。路面でマネキンが置いてあって若い店員さんがいて、っていうのはシティ感があるじゃないですか。もっと人がいて、原宿感があったんですよ。露店でシルバーアクセサリーの偽物売ってる外国人がいたりもしたし。
 

平成ゴジラのドキドキワクワク感を返せ

 小池:そういうのありましたね。「火と風」もそういう「昔はよかったけど、今はなんだかなあ」というところから始めましたけど、実際先ほどのオーガナイザー視点で街を観てると面白い人や物事は既に沢山あるってことに気づくんですよ。
 

 望月:そう。僕も今回話すに当たって色々考えてみたんですけど、やっぱり「人に会いに来てる」のかなってちょっと思います。音楽のイベントとかも人に会いに来てるっていう事があったり。山梨の文化で「無尽」ていうものがあるということとも関係があるのかもしれないですけど。
 

 小池:北海道から来ている方もいらっしゃるので解説しますが、「無尽」というのは山梨の飲み会の事で、ある意味女子会の先駆けとも言えるかもしれない、しきたりのことです。「○○会」という定例の集まり、飲み会が昔から無数にあるんですよ。
 

 望月:マンガの「闇金ウシジマくん」にも書いてあったんですけど、元々は商工会とか組合の経費を皆で出し合って助け合うっていう意味合いもあったみたいですね。
 

 小池:江戸時代にはお伊勢参りに行くためにグループで積み立てをしていたという記録もありますから、そういう物の名残なのかもしれないですね。それで…
 

 望月:それで、「人に会いに来てる」って話なんですけど(笑)。例えばコーヒーとか服屋は切り口の1つであって、そこにいる人と話をするのが面白いとか、そういうところが甲府の街の魅力なのかなと。でも来なきゃわからないわけじゃないですか。街の人たちを知らない人はやっぱり来ないわけですよ。僕の地元は隣町なんですけど、そこの友達は普段パチンコかソシャゲ(携帯ゲーム)をやるくらいしかやることがないんですよ。かくいう僕もたまにツルんで楽しんでいるわけですが(笑)。街に来て人と話をしたり、どっかぶらぶらしたりっていう楽しみ方を知らないっていうのが僕と同年代のリアルなところなのかも。
 

 小池:僕も大学時代地元の友達と遊ぶ、といったら大体ドライブなんですよね。僕は免許ないからいつも助手席ですけど、段々と行く場所がなくなる。そして最後はフルーツ公園やほったらかし温泉、ていう予定調和が待っているみたいな。
 

 望月:そうそう。結局そこで「モンストマルチ(ネットワークゲーム)やろうぜ!」っていうことになる。だから街に来てっていう楽しみ方をあんまり知らないんですよ。知って、街の人と面識とか関係性ができてくると楽しめるのかなと。だから、そこに行きつくまでに人を呼び込むような仕組みが必要なんじゃないですかね。それがここ最近ずっと感じていることです。やっぱり音楽とか趣味でやっている人は音楽イヴェントに行くじゃないですか。でも皆が皆そういうわけじゃないから、興味が無い人も甲府に自然と足を運ぶような理由をつくってあげるのは必要かなと。
 

 小池:そうですね。「来たら何かやってるから面白いだろ」みたいなのでもいいですよね。「とりあえず渋谷いくか」的な。
 

 望月:昔は僕らも映画を観に来てたんですよ。わざわざ。映画館は甲府にしかなかったから。今はイオンとかありますけどね。それが凄い楽しみだったし、ステータスだった。
 

 小池:僕もそうでした。小学校時代は毎年年末のゴジラね。わかる人はわかると思うんですけど、来年のゴジラに向かって「もう一年頑張ろう」っていう感じになった。どんなつらい時も、中二病みたいにそれを考えるだけで奮い立ちましたね。
 

 望月:「来年の敵は誰だ?」っていう。映画が終わった瞬間に来年の予告編が流れましたよね。今の「アベンジャーズ」みたいな流れ。
 

 小池:そうとも言えますね。1、2ヵ月先のイヴェントのトレイラー観て興奮したりは少なからずありますけど、1年は持ちませんよ。情報がこれだけあるとね。無いからこそしがみついて、抱いて抱いて抱きまくる、みたいなところあるじゃないですか。僕はあのドキドキワクワク感を取り戻したい、29にして(笑)。だからそういう楽しみがあればいいんですけど。
 

 望月:そうですね。「甲府ぐるめ横丁」とかも出来たし、甲府近辺に住んでいると夜とかも飲みに出てきやすくなったけどね。でも、車だからみんな。
 

 小池:そう。この街の楽しさをわかってもらうためには、車から降りてもらわないといけない。
 

 望月:それが大変なんですよね。電車も無ければバスも無いし。パーキングにお金払わなきゃいけない。お金払うならお金払うなりに、楽しい事無きゃ中々来ないじゃないですか。郊外だったらどこでも止められますからね。それでも甲府に来たいってことが無いと。そういう意味では、ぐるめ横丁とかは良いですよね。あれ目当てで来る人も増えたんじゃないですか。
 

 小池:あそこは確かに行けば何かやっている、っていうことの例かもしれませんね。
あと山梨の面白さといえば、僕はこの「火と風」をやっていて新しい物に沢山出会いました。例えば、ヒップホップ。山梨にはスティルイチミヤっていうヒップホップクルーがいて、東京までその名を轟かせているんですね。だからヒップホップが盛んだったりするんだけど、そのクルーの一人であるBIG BENさんに初期の「火と風」ではゲストとして参加してもらったりしていました。で、段々と僕もラップをし始めてしまったんですけど(笑)。まあ上手い下手とかは置いておいてね。

 

今、甲府で起きている事

もう一つは、リノベーション。これも昨年「火と風」のサブタイトルにしたことがあるんです。山梨は「空家率NO.1」「移住したい県NO.1」。だから需要と供給が一致して「これから移民増えるぞ!」っていう回にして(笑)。でも今、その問題は次のステージに来てるんですよ。
 

 望月:そうそう。「移住してからどうするんだ」という問題ですね。
 

 小池:うん。「移住したはいいけど、こんな所に来たつもりはねえ」っていうのが、まだあまり話題にならないけど今ホットな問題ですよね。「都会の喧騒から脱出したつもりだったのに、無尽ってなんだよ!」みたいな感じで(笑)。
 

 望月:話が違うじゃないかって思っている人もたぶんいますよね。来る方もセカンドライフとして来てるわけだし。移住させたい方は「来てください」って言うんだけど、その後のアフターフォローは大事かなと思います。仲良くなる仕組みっていうものも必要なのかなと。
 

 小池:反対に、移住する方も「地方都市」というものに幻想を抱きがち、っていうこともありますよね。婿養子とかお嫁に行くわけじゃないから、「よそ者」な訳ですし。おもてなしってレベルでは無いわけで。
 

 望月:あと山梨県民はツンデレなとこがありますよね。僕はずっと山梨にいるので思うんですけど、「俺たち甲州人」みたいなツンデレ感がある。ちょっとブラックなユーモアだから、最初冷たく感じるけど実際はウェルカム。だから勘違いされることが多いかもしれないですね。特に年配の人たちとかは。
 

 小池:まあ、そういうところが今ホットですね。それで、リノベーションの話に戻ってもいいですか。先ほども話した「火と風」リノベーション特集の回でもトークセッションのコーナーがあったんです。リノベーション関係でプランナー、設計する人、着工する人、イベント運営する人、の4人を招いて行ったんです。とても面白い話が聴けましたよ。

 それで、僕は彼らがやってるその面白いことをどう自分の分野(音楽)に代入できるか?っていう事を考えているんです。そこが僕のクリエイティヴィティに繋がっていく。そして、それはどの分野でも応用可能だと思うんですよ。望月さんはどう思いますか?
 

 望月:音楽といってもライヴハウスとかじゃなくて、色々な事ができる箱で共同管理にして何人かで出資、リノベーションして音楽機材とか入れて、みたいな感じのものが1つあればいいなと思います。甲府歩いてると、でかいビルもすっからかんになってるんですよ。廃墟みたいな。ああいう所を1フロアまるごとスケートパークとかにしちゃえば面白いって考えたりしてて。今、スケートパークは荒川とか行けばあるらしいんですけど、街中には無いんですよね。ちょっとやってるとお巡りさんとか来ちゃうし。
 

 小池:山梨でもどこかのスケートボード場が騒音問題で閉鎖されたってニュースが少し前にあったな、そういえば。
 

 望月:そうなんです。真偽のほどは置いておいて、屋外だとやっぱりそういう問題が出たりするんです。だから屋内スケートパークを作って、そこを防音なりしてDJブースとか楽器機材とか入れて、イベントもできるスケートパークが出来たらいいなって妄想してます。僕はスケーターではないんですけどね。
 

 小池:確かにそういう場所があったら面白いですね。今の望月さんが話してくれたことは、リノベーションを文化の施設に当てはめるとどうなるか?っていう話じゃないですか。僕が最初に話していたのは、音楽そのものに当てはめたらどうなるかという事なんです。このトークセッションが終わったら僕のバンドの演奏があるんですけど、そこで結構Jポップのカヴァーとかやってるんですよ。「EZ DD DANCE」って曲も結構やってるんですけど、僕の見立てだとこれは「空き物件」なんですよ。
 

 望月:DJ KOOの空き物件ですか(笑)。
 

 小池:そうなんですよ(笑)。メロディを建物の輪郭と見立てて、どう内装をぐしゃっとするかというのが勝負。だから「カヴァーやります」っていうと、May.Jさんの二番煎じだと思われがちなんだけど、全然違うことをやってるんですよね。今度から「リノベーションカヴァー」とでも名乗ろうと思います。
 

 望月:それは面白いですね。

 

 小池:そういうところで、東京に無い物が山梨にあるわけです。僕が東京に住みながら甲府でも活動しているって事を聴くと「伸太郎さん(山梨のご当地シンガー)にでもなるつもりなの?」って言われたりするんです。でも、僕はただ本当にこの街が面白いと思ったんですよ。望月さんもよく東京に行ってるからわかると思うんですけど。僕は甲府でも活動しているから、ヒップホップとかリノベーションに出会って刺激を受けて自分を更新できた。それで逆に東京にこれを持ち帰ったりして。
 

 望月:両サイドを見てる小池君の活動は面白いと思います。あと、音楽関連の話でいうと先日の「BLUE STAR MAGAGINE」でスティルイチミヤのメンバーの二人(BIGBENとYOUNG-G)の別ユニット、おみゆきチャンネルの取材に行って来たんですよ。ビート(曲)を制作している現場も見せて貰ったんです。そしたら大正琴を使ってたんですよ。大正琴って皆さん知ってますか?鍵盤を押さえて弾くと音が出るっていう楽器。昔は一家に一台くらいあったらしいんですよ。

 それをわざわざジャンク品の中から買ってきて自分の作品に落とし込んだりしているんですよね。話を聞いたら「捨てられてしまったものの中にも良い物っていうのはあって、それを再発見して落とし込んでいくっていう試みをこれからやっていきたい」ってそれが音のリノベーションっていうところに繋がっているなと。おみゆきチャンネルはそういう手法で音を構築してるんだなと感じました。
 

 小池:なるほど。別に僕が先ほど話した考え方は一例であって、リノベーションという概念をどう音楽に当てはめるかっていうのは人それぞれですからね。それにしても「フリースタイルダンジョン」で、今ヒップホップがまた盛り上がってますよね。
 

 望月:この間小池君が東京でやってる「ネオホットクラブ」っていうイベントに行ったんですよ。
 

 小池:そうそう。僕が御茶ノ水でやっているジャズのトークセッションイベントですね。その節はありがとうございました(笑)。前回は「ジャズ×日本語ラップ」がテーマで。
 

 望月:ジャズから見るヒップホップと、ヒップホップから見たジャズっていう両サイドの視点が面白かった。でイベントの後にイベントにも出演していた、ラッパーのTKda黒ぶち君と話して色々面白かったですね。

 あくまでイメージの話なんだけど、ヒップホップの人って結構、感覚がとんがっている人が感覚でイケるところまで突っ走るって感じが多いじゃないですか。凄い有名な海外アーティストとかでも凄い適当に弾いて「あーいけてんなー」みたいなところがある(笑)。実際はそうではないでしょうけど、かいつまんだ話。客観的に見るとあまりロジックを感じないけど、それがセンス的に超イケてて、ビジネスにも繋がっちゃってるのがヒップホップのイメージ。ざっくり言うと。

 そのイメージを逆手にとってカムフラージュとして商業的に大成功しているアーティストもいます。一方で、ジャズの人って凄い音楽的じゃないですか。ちゃんと譜面がなんちゃらなんちゃらとか、そういうロジックが表面化しているところが良いよね、とかTKda黒ぶちくんとしましたね。そこいくと僕はヒップホップ耳なので「これヤバいね!」くらいの話しかできないから(笑)そういうロジックとして聴く耳を持ってヒップホップも聴けるっていう点で、ジャズメンは羨ましいですね。
 

 小池:それが大事だと思うんですよ。肩肘張らないで、良いものは良いっていうのが一番楽しい。コミュニケーション能力の問題もあると思うんですよね。東京でもそうだし、甲府でもそうだけど。所謂リア充とか、コミュ障っていう言葉が象徴してると思うんです。皆ヒップホップ耳になったらいいんじゃないかな。楽しくて何が悪いの?っていうところで笑。
 

 望月:ヒップホップってサンプリング文化じゃないですか。要は、有りものをどう料理するかじゃないですか。自分から生み出すっていうことよりも、あるものを使ってどうかっこよくするか。昔の音拾ってきて新しい曲に落とし込むとか。言ってしまえばパロディですよね。そこがヒップホップの好きな所でもあります。
 

ニューコウフシティ構想

 小池:だから甲府も同じなんですよね。新しいものを無理やり作らなくても、実は楽しいものはある。そこをどう楽しく僕らがフロウするか、歩き回るかっていうのが1つの課題。
 

 望月:それで、ひとつのキーワードとして僕が思いついたのが「NEW KOFU CITY」なんです。この言葉の入ったTシャツを、元々は富雪ギャラリーで行われたTシャツ展の為に友人と遊びで作ったんですよ。仕事とは関係なくプライベートで作ったんですけど、予想をはるかに超える反響があった。ありがたいことに色んな人から着たいって声が殺到しちゃって、取材の話まで持ち上がって、これは段々と仕事に支障をきたすな、と。
 

 小池:Tシャツ屋になるかライターになるかっていう岐路に立ったんだ(笑)。
 

 望月:そうなんですよ(笑)。現状の体制と僕らのキャパで続けていくのがちょっと難しい、っていうことでひと区切りにしたんですけどね。今は僕らの手からは完全に離れ、甲府オリオンイーストにあるショップ、Jewels&Thingsオーナーの真白さんという、ちゃんと大切に扱ってもらえて、きちんとすべてをご自身の裁量で動かせる方が引き継いでくださいました。このデザインは、ジョンレノンが着てた「NEWYORK CITY」ていうTシャツのパロディなんです。でも、これがひとつ「新しい甲府」っていう概念、しかもニューヨークってめちゃくちゃ都会だけど、甲府ってめちゃくちゃ田舎だからそういう皮肉も面白いなと。

 あと最近HITOTZUKIっていう壁画を描く有名なアーティストに甲府の街中で作品を制作してもらう、っていう企画を少し前までやっていたんです。甲府の山梨中央銀行さんの裏側の壁と交渉して壁をゲットしまして、その70メートルくらいに壁画を描いてもらいました。以前から甲府で描いてもらいたいという話はしていたんですけどね。

 本当に殺風景なところだったんです。でも「何かここに描けるんじゃねえかな」って自分がそこを通って思ってた場所ではあったんです。HITOTZUKIさんの作品の力が強かったこともあり銀行に交渉してみたらオッケーいただいて。ただの壁なんだけど、やっぱりそこにアートがあるとちょっとだけ街の見え方が変わったりするんですよね。
 

 小池:ニューヨークとか街にアートとか音が溢れてますもんね。
 

 望月:ブルックリンとかハーレムとかああいう所も、もともと廃墟だったところにアーティストが入ったりしてアート活動が盛んになって、文化が発展したり治安が良くなったりっていう歴史もある。街の中にずっと残るアートがあったらいいなって思ったんですよね。それを「甲府市中心街ストリート再生事業」っていう企画に提案したら採用されたんです。今この作品のメイキング動画も今ネットに上がってます。この音楽を作ってくれたのが、先ほどのおみゆきチャンネルのお二人だったんです。

 

 小池:街にアートがあることは勿論いいんですけど、それを見て色々感じるっていう見る側のリテラシーがあるとなお良いですよね。
 

 望月:そうそう。押しつけじゃないけど、あれば見るじゃないですか。まずはそれを作っていくことが重要。今甲府駅で降りてアートを目にするってないですよね。信玄像しかない。県立美術館もバスでなきゃいけない。近代美術とかアートに触れられる場所が歩いて行ける距離になかったんですよ。「こうふのまちの芸術祭」が長年企画を続けていますけど、期間限定のものではなく、それとは別にずっとあるアートがあっても良いのかな、というのが動機でした。
 

 小池:あとはやる側がどんどん作品や企画を魅力的に解説していかないとね。「なにこれ?」っていう人もいると思うんです。そこらへんも課題じゃないですか。「火と風」も今回が最終回なんですけど、後継企画ではそういうところにもっと着手しようかと思います。音楽のイベントも勿論やりますけどね。例えば、今やりたいのは「武田信玄研究」。僕の中学校来の友人に武田家研究家がいるんですよ。論文とか書いてて。彼に「信玄提ってなんなの?」とか色々教えて貰うイベントをやりたいとおもっています(笑)。そうやって土地の文脈がわかればもっと街って楽しめるんじゃないかな。
 

 望月:その為には、こういう風に来てくれている人たちの口コミですよ。嘘でもいいから楽しかったよとかSNSに書いたりとか。
 

 小池:いや、嘘はいいですよ。でもまあ、嘘も大事?
 

 望月:オブラートに包んで、ね(笑)。狭い山梨こそ口コミの文化なんですよ。一人良いって言えば大体みんな良いって言いますからね(笑)。
 

 小池:どんどん皆で楽しい街を発信していきましょう、ということですかね。では、本日はこの辺で。ゲストは、望月智久さんでした。ありがとうございました。

 

望月智久(もちづきともひさ)
1987年7月15日生まれ。現中央市旧玉穂町出身。
甲府城西高校卒業。
甲府のフリーペーパー「BLUE STAR MAGAZINE」の記事執筆、企画、編集を担当。
趣味は、音楽(主に洋邦ヒップホップ、たまにMCとDJも)、マンガ、雑誌、ポップカルチャー。
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