YASUHIRO YAMANO

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──皆様、ご無沙汰しております。前回からだいぶ期間が空いてしまいましたが、第6回目のインタビューを始めさせて頂きます。本日はJR中野駅近くの居酒屋にて、東京藝術大学音楽学部声楽科に在学中の声楽家・山野靖博さんにお話を伺います。宜しくお願い致します。

 

高校からの藝大志望

──まずは生い立ちから。中学は山梨大学教育人間科学部附属中、高校は甲府西高校ですよね。小中と運動部に所属していたと伺いましたが、音楽を始めるきっかけを教えて下さい。

小さい頃から歌は好きでしたが、元々テレビが好きで、今から10数年前のテレビって面白かったじゃないですか?「なるほど!ザ・ワールド」や「マジカル頭脳パワー!!」等。そんな感じで音楽番組でも「速報!歌の大辞テン」や「HEY!HEY!HEY!」とか好きで、特に深夜の「THE夜もヒッパレ」って番組があったんですけど知ってます?この番組、昭和歌謡もやるんですね。小学生の僕は当時、そっち(昭和歌謡)が面白いなって感じてたんです。

──小学生にしては渋いですね!

そうなんです。歌うのも好きで、登下校や教室とかでもひとりで歌っちゃってたんですけど、ある日職員室の掃除をしていたら事務の先生が古い曲好きならって、さだまさしのCDを貸してくれたんです。小学4年生くらいかな。それがきっかけでまずシンガーソングライターに憧れたんですね。ギターやり始めて路上ライブもやったりして。でも、音楽はずっと好きだったんですけど、ピアノ習ったりとか専門的な音楽教育は受けた事がないんです。小学校はサッカーで、中学ではバスケ部でしたし。でも、西高への進学が決まって、バスケを続けようとは思わずに、吹奏楽部に入部したんです。

──高校から吹奏楽部って珍しいですよね?

そうですね。比率で言ったら少ないかもしれません。それに女の子が多いですからね(笑)
吹奏楽やってるとクラシックに触れる機会が増えるんですね。オペラの編曲もの演奏したりするので。あと、それとは別に高校の授業で芸術科目選択っていうのがあって、美術・音楽・工芸・書道から選ぶんですが、絵を描くのが苦手で字も下手だったので、消去法で音楽を選択したんですけど、そしたら音楽の先生が面白がってくれて、僕に興味を持ってくれたんです。
西高って全校生徒と保護者も呼んで行われる発表会が12月の土曜日にあって、音楽選択した人は合唱をするんですが、その中で3人だけソリストとして順番に歌うコーナーがあるんです。先生はそのトップバッターに僕を選んでくれたんです。

──高校生でそんな人前で歌うのって恥ずかしくて嫌じゃないですか?

僕はそれが嫌じゃなかったんですよね。目立ちたがりやなんですかね(笑)
それで歌うのが楽しいなって思ったんです。それに褒められて嬉しいですし。ただ、まだこの時点では今の進路は決めてなかったんです。
高校一年の冬、音楽の先生に「藝大いけるかもしれないよ」って言われたんです。ただ、ピアノやバイオリンとか音楽に関して専門的に勉強してないし、藝大に行けるなんて思わないじゃないですか。でも、行けるって言われたら行きたいって思ったんです。そこからですね、本格的に勉強し始めたのは。

──藝大って聞くと、小さい頃から英才教育で、絶対音感とかのイメージですけど、高校から目指す人もいるんですね。

僕が好運だったのは歌だったということです。器楽はやっぱり英才教育や絶対音感も必要ですけど、歌は特に男声って声変わりがあるじゃないですか?声変わりの時点で新しく楽器が生まれるって思ってもらえれば、声変わりした所からがスタートなんですよ。だから、高校からでも間に合ったってことですね。
器楽科とかの受験の場合は、ある程度完成されたものを篩にかけて落とすんですが、声楽の場合はまだ完成してる人はほとんどいなくて、その人の伸びしろやポテンシャルで判断します。

──面白いですね!そういった違いがあるんですね。でも、短期間で勉強してストレートで合格はすごい。藝大に通ってみてどうですか?

そうですね。うちは大学というか高度な専門職を育成する学校と思ってもらって良いですね。普通の大学って、1~2年で基礎科目を履修して単位やらサークルやらと盛り上がって、3年くらいから就活がみえてきて、そこから就活の話題一色で、4年になれば卒業出来る出来ないとなりますが、うちの場合は入った瞬間に誰がトップに出るかという事を始めますね。だからトップスピードから入るので、だんだん自分の実力が分かり始め、学校に来ない人も出てきます。

──でも良い環境ですね。皆それぞれ目的意識がはっきりとしていて。では、今後の活動について教えて下さい。

今、仲間と一緒に「Cloud of Arts」という組織を作って、新しい価値を市場に供給して、それで何か対価を得られないかなと考えたりしてます。フリーランスで自ら演奏会を企画して、自分の歌で稼いでる方もいらっしゃるんですけど、自分ひとりで会場や出演者の手配、経理やスケジュールの管理、フライヤーの制作まで、全部ひとりでやるのが一概にスゴいとは言えないと思うんです。カリスマが一人いるよりも、作業を分担して、組織として継承していく方が重要だと思うんです。

 

山梨には僕の趣味に合うアパレルが無い

──そういえば、10月27日に山梨でコンサートを開くんですよね?

はい。今までお世話になった方も多くいますし、大好きな山梨で今回コンサートを開催することが出来るのは嬉しいですね。あと、山梨って演奏会の数も少ないですし、音楽を勉強する環境があまり無く、僕の趣味に合うアパレル店とか面白い書店も無いなって思うんです。何も無いとは言いませんが、局地的過ぎると言うか、ネットワークが無いというか、内輪で止まっている印象を受けるんです。そう感じたのもあって、僕が携わる事で文化が集まって、もっと県内の高校生や若者が音楽などに触れる機会を作れるんじゃないかって思っています。
でもそれには、僕がもっと東京で勉強して、色んな人にあって仲間を作っていく必要がありますが、東京ないし各地の文化的リソースをもっと山梨に流していきたいんです!
その思いの一端として今回のコンサートを開くんですが、東京藝術大学で親しくしていて「Cloud of Arts」でも一緒に活動している、テノールの佐々木洋平とソプラノの廣橋英枝、あとピアニストにはタワレコで特集を組まれている程の活躍をみせるジャズピアニストの桑原あいを招いて行います。僕が一番下手で、本当にスゴいメンバーなんですよ。

──山野君じゃないと実現出来なかったコンサートなんですね!これは是非多くの方に来て欲しいですね。

コンサート名を「ちょっと特別な時間」って付けたのも、山梨って娯楽が少ないじゃないですか。テレビ観るかイオン行くか悪い事するか(笑)
そうじゃなくて、ちょっと手触りが違うジャズイベントに出会って欲しいなって思うんです。ホント少しでも興味があれば気軽に集まって欲しいですね。特に今回はクラシックを1曲もやらずに、ミュージカルとアメリカのスタンダードジャズ、あと日本の歌謡曲をメインにやろうと決めたので、カジュアルに来て欲しいなって。それを継続的にやっていきたいですね。既に2回目も決まっていて、来年2月に同じ会場でやるので。だから今回は“Vol.1”って付けました。

──それは素晴らしいですね。それと、チラシに“全国国民文化祭プレ企画”と記載されていますが、国文祭とも重なって、タイミングも良いですね。

幸運でした!高校生とか中学生にたくさん観に来て欲しいって思いがあったので、主催や後援で甲府市の教育委員会や文化協会に賛同して頂け、それと市内の小中高には全部チラシを送っていますし、どれだけ来てくれるか分からないですが、楽しみですね。
 

自分のニーズを知ったほうがいい

──では、最後に県内の若者(中高生)へメッセージをお願いします。

僕は自分が幸運だったと思うんです。中学でも高校でも良い仲間に恵まれ、波長があって上手くいったし、藝大という環境も自分の生き方や考え方、価値観に合っていたし、常に自分にとってプラスの集団や環境に属すことが良いと思うし、そうした方が良いと思います。
でも、そのためには自分自身のニーズを知る事が必要で、自分は本当に何がしたいのかを理解して、行動するべきですね。

──確かに、自分の潜在的なニーズを見つける事が出来れば、そこに一生懸命取り組めて、豊かな人生に繋がりますね。
山野さん、本日はありがとうございました。

 

山野靖博(やまのやすひろ) – 1989年山梨県甲府市生まれ。山梨大学教育人間科学部附属中学校、甲府西高校を経て東京藝術大学音楽学部声楽科に入学。声楽をこれまでに高橋康人、直野資、佐野正一の各氏に師事。バスという希少な声種を活かし在学中よりヴェルディ「仮面舞踏会」トム役、シュトラウス「こうもり」フランク役、プッチーニ「ジャンニスキッキ」ピネッリーノ役などでオペラに出演。2012年3月には大学の友人らと共に、東京と山梨県韮崎にてモーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」を上演し、ドン・アルフォンソ役を演じる。同公演は2会場で500名近くの動員を得た。Cloud of Artsに所属。東京藝術大学5年次に在籍中。
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